湯治のすすめと歴史
湯治の歴史
学校で習った江戸時代の儒学者で本草学者(博物学者)の貝原益軒。
彼の著書で、今でも読み継がれているものに「養生訓」があります。
「養生訓」とは健康な生活の暮し方についての解説書で、江戸時代の大ベストセラーであり、現代の暮らしにも通じるものが多々あります。
その中に、温泉入浴について記している処を見てみると、
・温泉が効果的な病気と、かえってよくない病気があること
・頻繁な入浴は害があるので、入浴の回数は1日3回までにとどめること
・湯に長く浸かりすぎず、軽く入浴すること
とあり、禁忌症や入浴回数や時間など現代の温泉療法でも当てはまることが事細かに書いてあります。
また、湯治に費やす日数は、七日あるいは十四日がよく、これを「一廻り」、「二廻り」という、とあります。
湯治の日数は7日の倍数で!
現代医学においても、人間の生体リズムはほぼ1週間サイクルであることがわかっており、日本古来の湯治の単位は医学的にも理にかなっています。
貝原益軒とほぼ同時代の漢方医後藤艮山(ごとうこんざん)も温泉入浴、ことに高温の温泉に入ることを推奨しており、
・一廻り1週間(病根を抉り出す)
・二廻り1週間(病根を除く)
・三廻り1週間(体力を回復する)
の合計3週間を、温泉療法(湯治)のワンクールとするという基本を提唱しています。
湯治はなぜいいのか?
現代医学では、温泉療法によって生体リズムの乱れが正常に戻るには4週間程度必要であることがわかってきました。
昔から言われてきたこと、行われてきたことが科学的にも証明されたのです。
温泉療法(湯治)を勧める最大の理由は、
温泉療法(湯治)は免疫力を回復させることにより、生体リズムを正常化させる!
というところにあります。
すなわち、温泉入浴は、
・自律神経のバランスを整えることにより、免疫系の中枢「白血球」の機能強化
・傷ついた細胞を修復する「ヒートショックプロテイン」の増加
・傷ついた細胞をアポトーシス(自死)に導く
などの働きにより、我々を健康に導いてくれるのです。
今後は、病気になる一歩手前の東洋医学でいうところの「未病の人」たちに対して「予防医学」としての湯治のあり方も参考になっていくのではないでしょうか。
プチ湯治のすすめ
現実的に考えると、なかなかワンクール1週間の湯治期間を確保するのも実際には難しいのではないでしょうか。
しかし、2~3泊のプチ湯治でも、内臓諸器官の軽度の乱れであれば機能調整が可能であると考えられるのです。
まだ、健康に自信があっても、2~3泊のプチ湯治を年に2~3回実行して、予防医学に努めてみると良いのではないでしょうか。