温泉で胃腸病治療
温泉で胃腸病治療はできるのか?
日本の温泉医学の草分け、杉山東北大学名誉教授は、
「温泉療法による飲泉と入浴はともに、胃酸の多い人ではその分泌を抑制し、
少ない人では促進させる。 これは泉質に関係ない」
といいます。
胃酸の分泌、胃腸の運動は、自分の意思に関係なく動いている自律神経に支配されています。
その自律神経にひずみがあれば、温泉入浴や飲泉の繰り返しにより、およそ7日間の周期を描きながら正常化していきます。
胃腸病に対する温泉療法のメカニズムの一つは、このように泉質に関係のない総合的な生体調整作用にあります。
もう一つのメカニズムは、原田岡山大学医学部教授の研究による、飲泉による胃の粘膜の血流増加です。
原田教授によれば、
「胃粘膜の血流量が増えると、胃の運動機能、胃液分泌機能が高まる。胃炎、潰瘍などの治癒力も上がり、発症、再発の予防につながる」
とのこと。
さらに、泉質の影響については、
「1回の飲泉では、泉質の影響を受ける可能性がある。ことに強酸性泉のように作用が強いものは影響があるだろう。
だが、連日飲用の場合は、正常化作用(総合的生体調整作用)として働き、泉質はあまり関係なさそうだ」
と述べています。
◎過敏性腸症候群、逆流性食道炎の温泉療法の効用
過敏性腸症候群は、下痢、便秘、あるいは下痢と便秘を繰り返します。
腸そのものには異常はなく、機能(運動)の異常が原因の病気です。
精神的要素を背景に持つ心身症であり、ストレスが多い現代社会において増加している病気の一つとなっています。
温泉療法は、自律神経の調節などを介して腸の動きを正常化します。
温泉地におもむく転地作用と規則正しい保養生活は、脱ストレスももたらしてくれます。
逆流性食道炎は、お年寄りや愛煙家によく見られる病気で、胃酸が食道に逆流し、胸焼けなどの症状を伴います。
温泉療法は、食道と胃の間で逆流を防止している括約筋の異常を正常化する働きがあるとされています。
飲泉時のポイント
飲泉時に注意しなくてはならないことは、
・タイミング
・量
・温度
の3点です。
タイミングは空腹時。
飲んだ直後は胃の運動が不安定になるので食事中はひかえます。
起床後朝食までの間、朝食と昼食の間、昼食と夕食の間に飲みます。
寝る前は、トイレが近くなるので避けた方がよいでしょう。
1回の量はコップ1杯弱(150~200cc)。
座って、ゆっくりゆっくりと飲みましょう。
温度は、熱くもなく冷たくもない不感温度(35~36℃)。
含有成分は時間とともに変質するため、原則として源泉を飲みましょう。
人の体は十人十色で個人差があるので、飲んでみておなかが張るなどの症状がでて、これは合わないかな?と思ったならやめましょう。
入浴だけでも効果は現れます。